用語集

形態観察の方法と測定機械 一覧(SEM,TEM,AFM…)

樹脂プラスチックの形態観察は、材料の微細構造、結晶構造、表面状態、界面構造などを理解するために重要です。形態観察によって、材料の物性や性能に関する詳細な情報を得ることができ、製品の開発や品質管理に役立ちます。以下に、樹脂プラスチックの形態観察方法と、それぞれの方法に使用される測定機械についてまとめます。

1. 光学顕微鏡観察

  • 概要: 可視光を使って樹脂の形態を観察する最も基本的な方法です。主に表面の状態、透明度、異物の有無などを確認します。
  • 方法: 試料に光を当て、レンズを通して拡大された像を観察します。透過型、反射型、偏光型などの観察法があります。
  • 機械:
  • 光学顕微鏡: 標準的な拡大観察装置。
  • 偏光顕微鏡: 結晶性樹脂や繊維の内部構造観察に使用。
  • 用途:
  • 樹脂の表面状態、クラック、異物、相分離の観察。
  • 結晶性ポリマーの結晶構造や繊維配向の観察。

2. 走査型電子顕微鏡 (SEM)

  • 概要: 電子ビームを使って高解像度の表面形態を観察する方法で、微細構造の解析に適しています。
  • 方法: 試料に電子ビームを照射し、反射電子や二次電子を検出して像を形成します。通常、試料は金属コーティングされて導電性を付与します。
  • 機械:
  • 走査型電子顕微鏡 (SEM): 高倍率で微細構造を観察。
  • 用途:
  • 樹脂の微細構造、表面粗さ、フィラーや繊維の分散状態、相分離構造の観察。

3. 透過型電子顕微鏡 (TEM)

  • 概要: 電子ビームを透過させて樹脂の内部構造を高解像度で観察する方法です。
  • 方法: 試料を超薄切片にして電子ビームを透過させ、透過した電子の強度や位相を検出して像を形成します。非常に高い解像度が得られます。
  • 機械:
  • 透過型電子顕微鏡 (TEM): 原子スケールの観察が可能。
  • 用途:
  • 樹脂の結晶構造、相分離、ナノフィラーの分散状態の観察。
  • ポリマーブレンドや複合材料の界面構造解析。

4. 原子間力顕微鏡 (AFM)

  • 概要: カンチレバー先端の探針を試料表面に近づけ、原子間力を検出して表面形態を観察する方法です。
  • 方法: 探針が試料表面を走査し、表面形状に応じたカンチレバーのたわみを測定します。表面の高さや硬さをナノメートルスケールで解析できます。
  • 機械:
  • 原子間力顕微鏡 (AFM): 表面形状や力分布の高精度観察が可能。
  • 用途:
  • 表面粗さ、微細パターン、界面力学特性の観察。
  • 薄膜やコーティングの表面形態の詳細解析。

5. X線回折 (XRD)

  • 概要: X線を使って樹脂の結晶構造を解析する方法です。結晶性や結晶サイズ、配向を評価します。
  • 方法: 試料にX線を照射し、結晶からの回折パターンを検出します。このパターンを解析して結晶構造や配向性を評価します。
  • 機械:
  • X線回折装置 (XRD): 結晶構造の解析に使用。
  • 用途:
  • 結晶性ポリマーの結晶構造、結晶配向の解析。
  • ブレンド材料や複合材料の結晶構造の研究。

6. フーリエ変換赤外分光法 (FT-IR)

  • 概要: 赤外線を吸収する分子の振動を検出して、樹脂の化学構造や配向を解析します。
  • 方法: 試料に赤外線を照射し、分子の振動に対応する特定の波長を吸収するスペクトルを取得します。
  • 機械:
  • フーリエ変換赤外分光計 (FT-IR): 化学結合や配向の解析。
  • 用途:
  • 結晶性ポリマーの配向状態、表面化学状態の観察。
  • ポリマーブレンドやコンポジットの相分離解析。

7. 偏光光学顕微鏡

  • 概要: 偏光光を利用して、結晶性ポリマーや繊維の配向を観察する方法です。
  • 方法: 偏光板を通した光を試料に照射し、試料内部の結晶配向による光の変化を観察します。
  • 機械:
  • 偏光光学顕微鏡: 結晶配向や相分離の観察に使用。
  • 用途:
  • 結晶性ポリマーの結晶構造、ポリマーブレンドの相分離構造の観察。

8. 3Dレーザースキャニング顕微鏡

  • 概要: レーザー光を使って、樹脂の表面形状を3次元的に観察・測定する方法です。
  • 方法: レーザー光を試料に照射し、反射光から表面の高さを測定し、3次元画像を取得します。
  • 機械:
  • 3Dレーザースキャニング顕微鏡: 表面の粗さや形状を3Dで解析。
  • 用途:
  • 表面粗さ、凹凸、パターンの3次元観察。

まとめ

樹脂プラスチックの形態観察には、光学顕微鏡、SEM、TEM、AFM、XRD、FT-IRなど、さまざまな方法と測定機械が使用されます。これらの観察方法は、材料の微細構造、表面状態、結晶構造、配向、界面構造など、さまざまなスケールと側面から材料の特性を評価するために選択されます。例えば、SEMやTEMは高解像度の微細構造観察に適し、AFMはナノスケールの表面形状の解析に有用です。これらの観察結果を組み合わせることで、樹脂プラスチックの特性や性能を包括的に理解することが可能になります。

このページに掲載されている企業・商品・材料等情報は、当協会が各企業の公式ホームページに掲載されている情報等を収集した上で、掲載を行っております。情報を精査し正しい情報掲載をしておりますが、当協会がそれを保証するものではありません(情報に誤りがあった場合は、お問合せフォームよりご連絡ください)。また、各種引用元のデータの変更、追加、削除などにより生じる情報の差異について、当協会は一切の責任を負わないものとします。当協会は、当サイトの掲載情報から直接的、または間接的に発生したと思われるいかなる損害についても責任を負わないものとします。  

-用語集
-, ,

関連記事

lca cfp

分子間力は静電相互作用によって制御される斥力・引力

分子間力(intermolecular force)とは分子同士に働くさまざまな種類の引力です。拡散によって接近した分子の間に分子間力が働くことで分子間反応が起きたり、複合体が形成されたりします。分子 …

lca cfp

樹脂プラスチックの誘電率と周波数(高周波・低周波)の関係

プラスチックの誘電率(Relative Permittivity, εr)は、材質と周波数によって異なります。一般的なプラスチック材料について、誘電率の値を周波数に応じて示した一覧を以下に作成します。 …

lca cfp

バイオポリマー(biopolymer)とは

バイオポリマー(biopolymer)とは植物や動物、微生物などの生物由来の原料から合成されるポリマーです。バイオポリマーは広義では生物が合成するタンパク質や核酸、多糖類などの天然高分子を含みますが、 …

lca cfp

ウィッティヒ反応(Wittig reaction)とは

ウィッティヒ反応(Wittig reaction)とはアルデヒドやケトンとリンイリドによってアルケンを生成する反応で、ゲオルク・ウィッティヒによって1954年に報告されました。カルボニル基の炭素-酸素 …

lca cfp

熱可塑性樹脂 とは

樹脂・プラスチックは、「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」に大枠で分けられます。 樹脂・プラスチックは常温では硬く、熱を加えると柔らかくなります。またこれを冷やすとそのままの形状で硬化しますが、さらにも …