ファンデルワールス力(van der Waals’ force)とは19世紀から20世紀に活躍した物理学者ヨハネス・ディーデリック・ファン・デル・ワールスによって提唱された分子間力の1つです。原子や分子、イオンなどに共通して働く双極子間相互作用です。ファンデルワールス力によって形成される相互作用はファンデルワールス結合とも呼ばれます。
ファンデルワールス力は配向力・誘起力・分散力の3つから成り、イオンの電荷による静電引力は含まれません。ファンデルワールス力は分子が持つ永久双極子に加えて、誘起双極子による相互作用を考慮しているのが特徴です。量子理論におけるゆらぎの影響によって局所的に短時間に生じる誘起双極子モーメントによる分子間相互作用が加味されているため、永久双極子のみを考慮するのに比べて精度の高い分子間力の計算が可能です。
ファンデルワールス力の配向力は永久双極子同士、誘起力は永久双極子と誘起双極子、分散力は誘起双極子同士の相互作用です。狭義のファンデルワールス力は分散力を指し、極性を持たない分子同士の疎水性相互作用を意味します。疎水性相互作用は分子構造を決める弱い相互作用としても知られています。永久双極子がない構造でも誘起双極子による相互作用での安定化が起こることが示され、定式化されたのがファンデルワールス力です。