六ふっ化硫黄(SF₆)は硫黄とフッ素から成る化合物です。沸点が-63.9℃の気体で、水や油への溶解度が低い性質を持っています。不燃性の気体で人体に対して無毒であり、無色無臭のガスとして1960年代から利用されています。硫黄の単体とフッ素の単体を使用して大規模生産ができるため、工業用途で活用が進められてきました。
六ふっ化硫黄は電力供給プラントでの絶縁物質として初期から用いられてきました。マグネシウムやアルミニウムの製造、半導体や液晶の製造にも利用されている物質です。工業利用が進められた影響で大気中への放出量が増加してきています。
六ふっ化硫黄は温室効果が高く、地球温暖化係数は23,900です。大気中での寿命も3,200年程度とされているため、1960年代からの排出量の増加が温暖化の原因の一つと考えられています。1997年の京都議定書で六ふっ化硫黄は排出抑制の対象となるフロン類の温室効果ガスに定められました。ただ、六ふっ化硫黄は電力供給に欠かせない物質で、代替物質が開発・実用化されていません。そのため、他のフロン類の規制による排出低減が進む中、六ふっ化硫黄は大気中の濃度の増加が続いているのが現状です。