オキシム(oxime)とは炭素-窒素の二重結合を持つイミンのうちで窒素上の置換基が酸素原子になっている有機化合物です。窒素上の置換基が水酸基の場合をオキシム、アルコキシ基の場合にはオキシムエーテルと区別することもあります。エーテル結合を有さないオキシムはニトロソ化合物との互変異性体として存在します。平衡はオキシム側に偏っていて、通常は分光学的手法ではニトロソ化合物は検出限界以下になります。
オキシムはアルデヒドまたはケトンとヒドロキシルアミンの脱水縮合によって合成されるのが一般的です。アルデヒド由来のオキシムはアルドキシム、ケトン由来のオキシムはケトキシムとも呼ばれます。また、オキシムとニトロソ化合物の互変異性を利用して、ニトロソ化反応を用いてオキシムを合成する手法も用いられています。典型的には亜硝酸に対する炭素求核剤の求核置換反応でニトロソ化を進行させてオキシムを合成します。
オキシムはイミンやケトンに比べると求電子性が低いですが、アルキルリチウムなどの強力な求核剤を使用すると付加反応が進行します。また、アルドキシムは脱水剤によってニトリルに変換される性質があります。オキシムの窒素-酸素結合は接触還元による切断が可能です。多様な反応性を有するため、有機合成における中間体としてオキシムが活用されています。