有機触媒(organocatalyst)とは触媒活性を持つ有機化合物です。無機化合物の金属触媒と対義的に用いられる表現です。有機触媒は有機分子触媒と有機金属触媒に分けることができます。有機分子触媒は触媒作用を示す低分子有機化合物を主に指し、分子中に金属を含んでいません。天然アミノ酸のプロリンを有機触媒とする反応が古くから有名です。一方、有機金属触媒は金属を含む触媒で、リガンドとして低分子有機化合物を使用することで反応のコントロールをしています。
2021年のノーベル化学賞では「不斉有機触媒の開発」の功績によってB. ListとD. MacMillan博士が受賞しました。有機分子触媒による不斉合成反応を開発した業績が称えられています。また、2001年には「キラル触媒による不斉反応の研究」で有機金属触媒による不斉合成を実現したW. S. Knowlesと野依良治とK. B. Shaplessが受賞しました。低分子有機化合物をリガンドとして利用する有機金属触媒の開発が評価されています。
有機触媒には他にも有機酸や有機塩基もあります。無機触媒とは異なる性質を持つだけでなく、分子設計の自由度があるので活発に開発が進められている触媒です。