目次
- 1 低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)とは
- 2 低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の歴史
- 3 低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の構造式
- 4 低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の製造方法
- 5 低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の特長
- 6 低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の成形加工方法
- 7 低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の成形加工条件
- 8 低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の基本物性表
- 9 低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の用途例
- 10 低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の用途画像
低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)とは
ポリエチレンには大きく分けて2種類あり、高密度ポリエチレン(HDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)がに分けることができます。
高密度ポリエチレン(HDPE)は「中低圧法高密度ポリエチレン」とも呼ばれ、結晶化しやすいポリエチレンです。なので、密度(density)が高く(約942kg/m³以上)、透明クリア性が余りなく、若干硬いものになります。主な用途として、スーパーやコンビニエンスストアでお買いものをした後に手渡されるレジ袋があります。ちなみに、レジ袋を伸ばすと結晶化します。
低密度ポリエチレン(LDPE)は「高圧法低密度ポリエチレン」とも呼ばれ、高密度ポリエチレン(HDPE)と比べて結晶化が鈍いです。また、名前の通り密度が低く(約910kg/m³以上−930kg/m³未満)透明クリア性があり、柔らかいものです。 低密度ポリエチレン(LDPE)は最もポピュラーなポリエチレンで、ビニール袋と世間で呼ばれているものです。透明クリア性があり、柔らかく、引張強度、引裂強度に優れています。
低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の歴史
低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)は、当時予期せぬかたちで発見されました。それは当時英国のインペリアル・ケミカルインダストリーズ社(ICI社)が1933年に高圧重合実験をしている際、偶発的に発見されました。工業化がスタートしたのは、その後1939年頃です。昔は、軍事用部品や電気的絶縁性に優れるためレーダーの配線被覆などに使用されていました。現在は、生活用品に多く用いられ便利な樹脂プラスチックとして使われています。
低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の構造式
出典画像:wikipedia
低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の製造方法
エチレンをラジカル重合をする点では、どのポリエチレンとも変わりませんが、低密度ポリエチレン(LDPE)の場合は高圧法を用いて重合させます。この高圧法は、インペリアル・ケミカルインダストリーズ社が発見し工業化をスタートさせたこともあり、ICI法とも呼ばれます。この高圧法の特徴としては、エチレンを1,000気圧以上の高圧下、かつ、100~350℃程度の高温化でラジカル重合させ得ることができます。
低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の特長
- 比重が軽い(0.92程度)
- 比較的に電気的絶縁性が良い
- 透明クリア性がある
- 無味無臭
- ポリエチレンはガラス転移点が-125℃と樹脂プラスチックの中でもダントツに低く、耐寒性(実用的には-60℃ぐらいまで)に優れる
- 耐衝撃性・耐薬品性・耐水性に優れている
- 吸水率が高密度ポリエチレン(HDPE)やポリプロピレンに次いで極めて低い。さほど変わらないレベル
- 加工性が良い
- 低密度ポリエチレンに耐候添加剤などを入れることにより耐候性に優れ、数十年の耐久性が必要となる電線被覆などに使用される
- 耐熱性は70~90℃程度と低く、耐油性も悪いので、加熱調理用フィルムなどには適していない(加熱調理用だと高密度ポリエチレン(HDPE)を使用する場合が多い。厚みに比例して耐熱性も上がる傾向にある)
- 接着性、印刷性などの表面張力が悪いため、コロナ処理などを行い表面改質を行う必要がある
- 長い時間応力がかかりながら界面活性剤が接触している場合、クラックが起こることがある
低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の成形加工方法
インジェクション成形、中空成形、フィルム成形、押出し成形、延伸成形 など
低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の成形加工条件
項目 | 値 |
---|---|
射出成形温度 | 149〜371℃ |
圧縮成形温度 | 135〜177℃ |
低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の基本物性表
物理的性質
項目 | 単位 | 値 |
---|---|---|
比重 | – | 0.91~0.93 |
ロックウェル硬度(D785法) | – | D41〜46(Shore)R10 |
吸水率 | % | <0.015 |
機械的性質
項目 | 単位 | 値 |
---|---|---|
引張り強さ(D638/651法) | Kg/㎠ | 70〜160 |
曲げ強さ(D790法) | Kg/㎠ | – |
引張弾性率(D638法) | 104kg/㎠ | 0.11〜0.25 |
圧縮強さ(D695法) | Kg/㎠ | – |
衝撃強さ アイゾット | Kg・cm/cm | – |
熱的性質
項目 | 単位 | 値 |
---|---|---|
荷重たわみ温度 | ℃ | 100以下 |
線膨脹係数(D696法) | 10-5/℃ | 16〜18 |
熱伝導度(C177法) | 10-4cal/sec・cm/℃・cm | 8 |
連続耐熱温度 | ℃ | 70〜90 |
燃焼性 | – | 可燃性 |
電気的性質
項目 | 単位 | 値 |
---|---|---|
絶縁破壊強さ(D149法) | kV/mm | 18.1〜27.5 |
体積固有抵抗 | Ω/cm | 10^16以上 |
誘電率(D150法) | – | 2.25〜2.35 |
※上記データは参考値です。
低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の用途例
- 最も有名な用途では、透明で柔らかいごみ袋や一般的に透明なビニール袋やジッパー袋と言われているもの、食品用ラップフィルム(特定のメーカーがLDPEを使用)、重い米袋、マヨネーズのチューブ容器、傘袋、カレンダー袋 など
- 農業用の黒いフィルムやポテトチップス袋の1部層、包装用フィルム、電線被覆、パイプ など
- 梱包副資材として使用される「プチプチ」と呼ばれる気泡緩衝材
- 射出成型品では、タッパーや容器、ドリンクキャップ など
低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene/LDPE)の用途画像
▽低密度ポリエチレンのゴミ袋
出典画像:wikipedia