水素結合(hydrogen bond)とは酸素や窒素などの電気陰性度が高い原子に共有結合している水素と、他の官能基の非共有電子対の間で起こる非結合性の相互作用です。アメリカの化学者ポーリングによって提唱された結合で、水素イオンを介して2つの原子が結合する水素橋結合と呼ばれていた時代もあります。水素が結合している原子団を水素結合供与体(ドナー)、非共有電子対を持つ原子団を水素結合受容体(アクセプター)と呼ぶのが一般的です。
水素結合は方向性のある結合です。電気陰性度の高い原子と水素の共有結合のベクトルの方向に非共有電子対が存在する必要があります。ベクトルがずれる、あるいは水素結合ドナーと水素結合アクセプターの距離が遠くなると安定化エネルギーが低下します。典型的な水素結合によるエンタルピーは1.9kcal/mol~6.9kcal/molです。フッ素のように強い電気陰性度を持つ原子が関与すると40kcal/mol程度まで高くなる場合もあります。
水の網目状の水素結合ネットワークは水の特殊な物性を生み出す要因になっています。また、水素結合は高分子の立体構造の維持に大きな貢献をしています。デンプンやPVAなどの構造や物性にも影響を与えている因子です。