HSAB則(Hard and soft acid and base theory)とはラルフ・ピアソンによって報告された酸塩基反応の予測に用いられる定性的な法則です。HSABとはHard、Soft、Acid、Baseの頭文字で、酸(Acid)と塩基(Base)を硬い(Hard)、軟らかい(Soft)という概念で分類して酸と塩基の反応性について相性の良さを予測するのが特徴です。
硬さ・軟らかさは電気陰性度・電荷密度・分極率の大きさを主な指標として評価できます。電気陰性度が低く、電荷密度が高く、分極率が小さいのが硬い酸です。プロトンやナトリウムイオンなどが該当します。軟らかい酸は銀イオンや四級アンモニウムカチオンなどが代表例です。
硬い塩基は電気陰性度が高く、電荷密度が高く、分極率が小さい性質があり、水酸化物イオンや炭酸イオンなどが該当します。軟らかい塩基はπ共役系を持つ分子が多く、ベンゼンやヨウ素などが典型例です。
HSAB則では硬い酸と硬い塩基、軟らかい酸と軟らかい塩基が反応しやすいと予測するのが基本です。硬さを評価する定量的指標として化学硬度もラルフ・ピアソンによって提唱されていますが、一般的には電気陰性度や分極率に基づいて定性的な反応性の判断に用いられています。