カチオン重合(cationic polymerization)とは重合反応の活性種がカチオンになっているイオン重合です。カチオン重合ではカチオンの活性種に付加反応を起こし、新たにカチオンを発生させることが可能な電子供与性のあるビニル化合物がモノマーとして中心的に用いられています。新たに生じたカチオンに対して、次のモノマーが付加することで重合が進行します。
カチオン重合では反応開始時にブレンステッド酸またはルイス酸を添加するのが一般的です。例えば、エポキシドを開始剤としてトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を作用させてカチオン重合をおこなうことにより、ポリエーテルを合成できます。また、カチオン重合では複数のモノマーを混合して共重合をおこなうことも可能です。ビニルエーテルとエポキシドの共重合や、さらにケトンを添加した三元共重合が有名例です。
カチオン重合は反応制御が大きな課題になります。アルデヒドとビニルエーテルの交互重合のような反応制御を可能にした報告例も増えていますが、基質一般性が高いとは言えず、反応条件の最適化を個別におこなう必要があるのが現状です。安定性の高いカチオンを活性種として選んでリビング重合を成功させている例も増えているため、今後の展望が広い重合方法です。