芳香族求電子置換反応(aromatic electrophilic substitution reaction)とは芳香環上で進行する求電子材との置換反応です。芳香環が求核剤となり、求電子剤と反応して芳香環上の原子が置換されます。一般的に芳香族は共鳴による安定化を受けていて反応性が低いと言われていますが、電子状態によっては高い反応性を示すことも稀ではありません。ヘテロ芳香環ではインドールやピロールのように高い求核性を持つ構造もあります。ベンゼン環でも電子供与性のあるアミノ基やアルコキシ基を有する場合に電子密度が高くなり、求核性を持つのが一般的です。強い求電子剤で処理した際にはアレーニウムイオン中間体を経て芳香族求電子置換反応が進行します。
芳香族求電子置換反応として有名なのはFreidel-Craftsアルキル化反応・アシル化反応です。ハロゲン化アルキルや酸ハライドに塩化アルミニウムを触媒として作用させることで、アルキルカチオンやアシリウムイオンといった強力な求電子剤を発生させて芳香族求電子置換反応を進行させます。
高分子合成でも芳香族求電子置換反応が活用されています。架橋剤によって芳香環を架橋する際にはフェノールなどの求核性の高い芳香環を利用して求電子剤を作用させるのが常套手段です。