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ポリエチレンテレフタレート(PET)の成膜不具合と対策

ポリエチレンテレフタレート(PET)の成膜不具合は、製造プロセス中やその後の処理において、様々な原因で発生します。以下に、代表的な不具合の種類とそのメカニズムを一覧表でまとめました。

不具合の種類メカニズム説明・原因
ピンホール不均一な押出や冷却、異物混入成膜中にフィルムが均一に形成されないか、異物が原因で微小な穴ができる。成膜速度や温度管理が不適切だと発生しやすい。
表面のムラ流れ不良や温度変化成膜中の温度変化や樹脂の流れ不良によって、表面にムラが生じる。冷却速度が不均一な場合にも発生。
気泡ガスの捕捉や揮発性物質の放出樹脂中にガスや揮発性成分が含まれている場合、成膜時にこれらが放出され、フィルム中に気泡が発生。乾燥不足や加熱過程での問題が原因。
フィッシュアイ高分子量のゲル化物や不純物フィルム中に不純物や高分子量のゲルが混入し、表面に小さなレンズ状の異物が形成される。主に原料の品質や混合不良が原因。
ストリーク(筋)溶融時の流れの不安定さ成膜中の樹脂流れが安定しない場合、フィルムに筋状の線が現れる。これは主に押出成形機やダイの設定不良によって発生する。
しわ(ウェーブ)張力不均一、冷却の不均一成膜時の張力が不均一、または冷却が均一でない場合にフィルムにしわが生じる。特に冷却速度の差が原因となることが多い。
偏肉(フィルム厚のばらつき)ダイの設定不良や押出不均一成膜中の樹脂の流れが不安定だったり、押出ダイの設定が適切でない場合、フィルムの厚みが一定でなくなる。温度や圧力の管理が不十分な場合も原因となる。
透明度の低下結晶化、冷却速度の問題PETが結晶化すると、透明度が低下して曇りが発生する。急冷や過剰な冷却が原因で結晶化が促進される場合がある。
ブロッキング(粘着性)高温保存や冷却不良フィルム同士がくっつきやすくなる現象。冷却不良や過剰な圧力が原因で、フィルム表面に粘着性が生じることがある。高温保存も原因の一つ。
ひび割れ過度な引張、過度の加熱成膜時または後処理時に過度の引張や加熱が加わると、フィルムがひび割れを起こす。温度制御や張力管理の不足が原因。

各不具合の原因と対策

  • ピンホール、気泡、フィッシュアイ: 原料の品質管理や成膜プロセスでの温度管理が重要です。異物混入やガスの発生を抑えるため、乾燥と混合のプロセスを最適化する必要があります。
  • 表面のムラ、ストリーク、偏肉: 成膜時の樹脂流れや冷却工程が適切であることを確認することが重要です。押出速度やダイの設定を定期的にチェックすることで改善できます。
  • しわ、ブロッキング、ひび割れ: 張力と冷却のバランスを取ることが重要です。また、フィルムの保存環境を適切に保つことで、長期間にわたる品質維持が可能になります。

まとめ

PETの成膜不具合は、主に成膜プロセスの温度、圧力、張力、冷却速度、および原材料の品質に起因します。これらの要素を適切に管理することで、多くの不具合を防ぐことが可能です。また、定期的な機械のメンテナンスやプロセスの見直しも、品質改善に役立ちます。

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