インターカレーション(intercalation)とは分子構造に存在する空隙に挿入して安定化を受ける反応です。層状構造が形成されている際に2つの層の間に挿入されるのが典型的で、挿入された化合物は層間化合物やインターカレーターと呼ばれます。
インターカレーションは高分子が構造化した際にイオンや小分子などが挿入することで起こります。例えば、DNAは核酸のポリマーで二本鎖の二重らせん構造を有するのが特徴の生体物質です。二重らせん構造の中には塩基と呼ばれる複素芳香環が重ね合わさった構造が存在し、アントラサイクリンやベンゾピレンなどの多環性芳香族化合物がインターカレーションを起こしやすい性質があります。インターカレーションが起こるとDNAは二重らせん構造が固定化され、DNAを鋳型とする核酸合成が抑制されます。アントラサイクリンのようにインターカレーションによってがん細胞の増殖抑制をする薬の開発も進められていますが、逆にベンゾピレンのように増殖阻害よって細胞機能が障害されてがんを引き起こすリスクのある物質も知られています。
インターカレーションは構造安定化に寄与するため、高分子の構造や機能の制御にも用いられます。炭素電極はアルカリ金蔵イオンがインターカレーションを起こすことで電極として機能するのが特徴です。