エポキシド(epoxide)とは3員環エーテル構造を有する有機化合物です。オキシランやオキサシクロプロパンとも呼ばれます。ひずんだ3員環構造を有するため、エポキシドは求核剤との反応によって開環反応が起こりやすいのが特徴です。小分子のエポキシドにはグリシドールやエピクロロヒドリンなどの固有名詞を持つ化合物が多数あります。
エポキシドはアルケンの酸化反応によって合成されるのが主流です。酸化剤としてはmCPBAや類似の過酸化物がよく用いられています。オキソ金属錯体による触媒的なエポキシ化反応も多数開発されていて、不斉触媒による立体選択的なエポキシドの合成も可能です。バリー・シャープレスやエリック・ジェイコブセンによって開発されたサレン錯体による不斉エポキシ化反応が汎用性が高いことからよく用いられています。また、アルコキシドによる隣接炭素上の求核置換反応によってエポキシドを合成する場合もあります。
ポリマー合成の分野ではエポキシドの開環重合によるエポキシ樹脂の合成がおこなわれています。フェノールとエポキシドを有するモノマーの単独重合や、ビスフェノールとエピクロロヒドリンの共重合などによって合成されるのが一般的です。