1,3-双極子(1,3-dipolar)とは3つの原子が共有結合をしていて、形式電荷を持つ2つの原子とπ結合によって形成されている共鳴構造を持つ分子構造です。プラスの形式電荷を持つ原子が中心になり、隣接する一方の原子と二重結合または三重結合、他方の原子と単結合を形成していて、単結合でつながっている原子にはマイナスの形式電荷があるのが一般的です。
1,3-双極子として典型的なのはオゾン、ニトロ化合物、アジド化合物、ニトリルオキシド、ニトロン、イリドです。オゾンは3つの酸素原子が連続的に結合している分子で、中心にある酸素はプラスの形式電荷を帯び、両端の酸素原子は等価でマイナスの形式電荷を帯びています。対称分子の場合には電荷分布に偏りはありませんが、ニトロンのように形式電荷が酸素上または炭素上に分布する場合には電気陰性度の大きい酸素の方にマイナスの電荷が偏って分布します。共鳴構造としても寄与が大きいため、1,3-双極子の反応性にも影響を及ぼす要素です。
1,3-双極子はπ結合を有するアルケンやアルキンなどに対して1,3-双極子付加反応を起こします。協奏的な環化反応が進行するため、アルケンに対してシス付加を起こす立体特異性があるのが特徴です。