光延反応(Mitsunobu reaction)は1967年に光延旺洋によって報告された汎用性のある求核置換反応です。水酸基を反応系中で脱離基として、酸性度が高い求核剤やアミンなどによる求核置換反応を進行させることができます。
典型的な光延反応ではDEAD(ジエチルアゾジカルボキシラート)などのアゾジカルボン酸エステルとトリフェニルホスフィンを試薬として用います。DEADとトリフェニルホスフィンの反応によって開始され、水酸基とトリフェニルホスフィンの反応によって安定なトリフェニルホスフィンオキシドを生成するのを原動力として進行するのが光延反応の特徴です。光延反応では高い精度で求核置換反応がSN2機構で進行します。そのため、不斉中心での光延反応では立体反転を伴って進行するのが一般的です。
DEADとトリフェニルホスフィンを用いる光延反応は通常はpKaが14以下の求核剤しか高い反応性を示しませんが、アゾ化合物などの試薬の工夫によってより酸性度の低い求核剤も光延反応に使用できるようになっています。角田試薬と呼ばれるシアノメチレントリメチルホスホラン(CMMP)は改良光延試薬とも呼ばれ、反応性の低い求核剤による光延反応に頻用されています。