フロンティア軌道理論(frontier orbital theory)とはフロンティア軌道と呼ばれる軌道によって分子の性質や反応性を予測する化学理論です。フロンティア電子理論とも呼ばれていて、日本人の福井健一氏によって1952年に提唱されました。
フロンティア軌道理論では最もエネルギーの高い被占軌道と最もエネルギーの低い空軌道との間で反応が起こると予測するのが特徴です。求核剤の最高被占軌道(HOMO)と求電子剤の最低空軌道(LUMO)のエネルギーレベルが近いときに軌道間相互作用が起こって化学反応が起こるというのが基本理論です。反応に関与するHOMOとLUMOのことをフロンティア軌道と呼びます。フロンティア軌道理論では分子軌道理論によって導き出される多数の軌道をすべて考慮せず、エネルギーレベルを考えて最も電子遷移が起こりやすいと考えられる軌道のみを考慮するのが特徴です。HOMOよりも低いエネルギーの軌道やLUMOよりも高いエネルギーの軌道は通常の反応では関与することがないと仮定しています。
多くの軌道相互作用による電子環状反応やシグマトロピー反応などでは合理的に説明することが可能です。電荷支配の反応では予測が外れることがありますが、軌道支配の反応では信頼性が高いことが知られています。