分極(polarization)とは電荷がプラスとマイナスで偏ることや、磁極がN極とS極に分かれることを指します。化学では誘電分極と極性による分子の分極の二種類があります。誘電分極とは外部から電場をかけたときに誘電体がプラスとマイナスに分かれる現象です。電場の影響によって誘電体の内部にある電子が移動して一方に偏ることによって起こります。
金属のように自由電子がある物質では静電誘導と呼ばれる現象です。自由電子がない不導体の場合にも分子全体に電荷の偏りが発生して分極が起こります。一方、極性による分子の分極は分子を構成する原子の電気陰性度の違いによって生じます。例えば、塩化水素分子の場合には水素原子に比べて塩素原子の電気陰性度が高いため、水素原子がプラス、塩素原子がマイナスの電荷を帯びます。水素分子や塩素分子のように対称分子の場合には電荷の偏りが生じないため、分子は分極しません。
分極が大きくなると原子間の結合が共有結合からイオン結合になります。塩化水素の場合には分極が小さいので共有結合と見なされるのが一般的ですが、塩化ナトリウムの場合には分極が大きいのでイオン結合と見なされます。ただし、分極の程度と結合の性質についての明確な境界線はありません。