電子環状反応(pericyclic reaction)とは共役しているπ電子系における協奏的な環状化合物の形成反応です。広義では環状化合物が開環する反応も電子環状反応と呼びます。ペリ環状反応とも呼ばれています。電子環状反応は複数の結合形成が同時に進行するのが特徴です。
典型的なのはDiels-Alder反応で、ジエンとアルケンが協奏的に反応して二つの結合が同時に形成されます。Diels-Alder反応では2つの異なる分子が結合して環状構造を形成しますが、電子環状反応では単分子で環状構造を形成する場合もあります。ブタジエンとシクロブテンの相互変換が典型的な単分子での電子環状反応です。電子環状反応では一般的にπ電子系の両端で新しいσ結合が形成され、π共役系は短くなります。分子内反応・分子間反応のどちらの場合にも分子軌道の対称性が満たされているときのみ反応が進行します。
結合形成の際には電子環状反応に関与する電子数によって立体化学が変わるのも特徴です。結合に関与する電子数が偶数の場合には熱的プロセスでは同旋的、光的プロセスでは逆旋的になります。電子環状反応に関わる電子数が奇数の場合には熱的プロセスでは逆旋的、光的プロセスでは同旋的に反応します。