配位子(ligand)とは金属錯体の中心金属に対して配位結合している化合物です。金属イオンはさまざまな配位子による配位を受けて安定化されています。配位子はルイス酸性を持っていて空のp軌道やd軌道を持つ金属に対して、非共有電子対を用いて配位するのが一般的です。窒素やリン、酸素や硫黄の官能基を持つ化合物が配位子としてよく用いられています。例えば、パラジウム触媒のクロスカップリング反応で頻用されているPd(PPh3)4ではリンが配位子として使われています。
配位子は配位することで中心金属の電子状態を変化させます。異なる配位子を利用することで金属触媒反応の反応性をチューニングすることが可能です。また、金属中心に配位できる場所が2つある二座配位子、3つある三座配位子などもあります。多座配位子になるとエネルギー的に有利になるため、金属錯体を安定化することが可能です。
配位子によって反応性を調節することにより、複雑な反応の制御をすることが可能です。不斉中心や不正軸を有する配位子を利用して、触媒的不斉合成も活発におこなわれています。配位子の工夫によって立体化学の制御をすることもできるため、金属触媒反応では配位子が重要な役割を果たしています。