吸収スペクトル(absorption spectrum)とは物質に多様な波長の光を照射したときに、波長ごとに吸収された光のエネルギーを示したものです。一般的には縦軸を吸光度、横軸を光の波長としてグラフにして図示します。吸光スペクトルを測定するときには一定の強さの光を照射し、物質を透過した光の波長と強度を測定します。物質を通過したことによって弱くなっていたときには、その分だけ物質に吸収されたと判断するのが基本です。
原子や分子は光をエネルギーとして吸収するポテンシャルを持っています。光エネルギーによって基底状態から励起状態に遷移するのが一般的で、励起状態になった物質は熱エネルギーを放出して基底状態に戻ることが可能です。励起状態の種類や置かれている環境によっては分解反応が進行したり、他の分子との反応が起こったりすることもあります。
高分子分野では、吸収スペクトルは合成化合物の物性値として測定され、物質の同定や純度検定の目的で用いられます。また、合成高分子の色合いや紫外線遮断効果を特徴付けるための基礎データとしても吸収スペクトルが測定されることが多くなっています。紫外領域や可視光領域の吸収スペクトルを測定することによって定量的に定義できるからです。