けん化(saponification)とはアルカリ性条件によってエステルを加水分解することです。石鹸の製造でよく用いられていて、油脂をアルカリによって加水分解することにより脂肪酸塩とグリセリンに分解する方法がよく用いられています。
アルカリとしては苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)が主流ですが、水酸化カリウムも利用される場合があります。油脂のけん化では必要な水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの量をけん化価と呼びます。1gの油脂をけん化するのに必要なアルカリのmg数として定義されていて、油脂の脂肪酸エステル部位の数によってけん化価が変わります。
けん化はエステルのアルカリ加水分解という広い意味があり、石鹸の製造以外でも活用されています。ポリマー合成ではポリビニルアルコール(PVA)の物性を整えるのにけん化が活用されています。酢酸ビニルの重合によって合成したPVAを水酸化ナトリウム水溶液でけん化することにより、酢酸基と水酸基のバランスを調整することで物性を変えることが可能です。水酸基が露出した割合はけん化度と呼ばれていて、PVAの物性や品質を管理する指標として用いられています。一般的にはけん化度が高いほど年度と被膜強度が高くなりますが、水への溶解性が低下します。