ジアステレオマー(diastereomer)とは立体異性体の中で、エナンチオマーに該当していないものを指します。立体異性体とは平面の化学構造は一致していても、立体構造を見たときには回転や平行移動をしても互いに重ね合わせられない異性体です。エナンチオマーは互いに鏡像の関係にある立体異性体で、鏡に映した対称構造が一致します。ジアステレオマーは鏡に映しても立体構造が一致しないのが特徴です。
幾何異性体も広い意味でジアステレオマーに含まれます。幾何異性体はアルケンなどの二重結合を持つ化合物のシス-トランス異性体です。
ジアステレオマーは平面構造が同じだけで、化学的性質も物理的性質も互いに異なる物質です。ただ、ジアステレオマー間の物性や反応性は似ていることが多く、複数のジアステレオマーの混合物を単一のジアステレオマーに分離するのは容易ではない場合もあります。結晶性や極性の違いによって再結晶やクロマトグラフィーによって分離できることもあります。
ポリマー合成ではジアステレオマーによって物性が変わるリスクがあるため、ジアステレオマーが生じない重合方法を選ぶのが一般的です。モノマーとしてもジアステレオマーがない分子を利用するのが常套手段になっています。