不飽和結合(unsaturated bond)とは二つの隣接原子が一価ではなく、二価以上になっている結合です。有機化合物の場合にはσ結合と1つまたは2つのπ結合から成ります。
1つのσ結合と1つのπ結合から成る不飽和結合は二重結合で、炭素―炭素間だけでなく、炭素―酸素間や炭素―窒素間などでもう形成される結合です。炭素―炭素の二重結合によってアルケン、炭素-酸素の二重結合ではアルデヒドやケトンなどが形成されます。二酸化炭素やアレンでは中心の炭素が2つの直交する2重結合を持っています。
1つのσ結合と2つのπ結合から成る不飽和結合は三重結合と呼ばれます。三重結合には炭素―炭素結合によるアルキン、炭素―窒素結合によるニトリルが典型的な構造です。
不飽和結合は原子間の結合エネルギーが単結合より高いですが、反応性は高い性質があります。不飽和結合のπ結合はσ結合よりもエネルギーが低いからです。ポリマー合成でよく用いられるラジカル重合では、不飽和結合のπ結合のエネルギーが低いのを利用して選択的かつ連鎖的な結合形成反応を実現しています。
また、不飽和結合は共役による安定化や不安定化を受ける特性があります。芳香族化合物はπ電子の非局在化による安定化を受けている代表的な化合物です。