樹脂プラスチックの鉛筆硬度試験は、材料の表面の耐傷性を評価するための重要なテストです。以下は、樹脂プラスチックの鉛筆硬度試験に関する一覧表と、試験方法の詳細です。
樹脂プラスチックの鉛筆硬度試験の一覧表
鉛筆硬度等級 | 硬度の意味 | 試験における用途 |
---|---|---|
9H | 最も硬い鉛筆 | 非常に高い耐傷性が要求される樹脂プラスチックの評価 |
8H | 非常に硬い鉛筆 | 高い耐傷性が要求される樹脂プラスチックの評価 |
7H | 硬い鉛筆 | 強い耐傷性が必要な樹脂プラスチックの評価 |
6H | 硬い鉛筆 | 比較的高い耐傷性が要求される樹脂プラスチックの評価 |
5H | 硬い鉛筆 | 耐傷性が重要な樹脂プラスチックの評価 |
4H | 硬い鉛筆 | 一般的な耐傷性の評価 |
3H | やや硬い鉛筆 | 通常の耐傷性の評価 |
2H | やや硬い鉛筆 | 通常の耐傷性が要求される樹脂プラスチックの評価 |
H | 硬めの鉛筆 | 基本的な耐傷性の評価 |
F | 中硬鉛筆 | 耐傷性と柔軟性のバランスを評価 |
HB | 標準硬度 | 標準的な耐傷性と柔軟性の評価 |
B | 柔らかい鉛筆 | 柔軟性が必要な樹脂プラスチックの評価 |
2B | 柔らかい鉛筆 | 柔らかいが、まだ樹脂プラスチックに適した評価 |
3B | 非常に柔らかい鉛筆 | 高い柔軟性が要求される樹脂プラスチックの評価 |
4B | 非常に柔らかい鉛筆 | 柔軟性が非常に重要な樹脂プラスチックの評価 |
5B | 非常に柔らかい鉛筆 | 柔軟性が非常に重要な樹脂プラスチックの評価 |
6B | 非常に柔らかい鉛筆 | 柔軟性が極めて重要な樹脂プラスチックの評価 |
鉛筆硬度試験の方法
1. 準備
- 試験材料の準備: 試験対象となる樹脂プラスチックを平滑で均一な面に整えます。必要であれば、試験前に表面を清掃し、試験結果に影響を与えないようにします。
- 鉛筆の選定: 硬度が異なる複数の鉛筆(一般的には9Hから6Bまで)が必要です。鉛筆は、試験前に砥石で60度の角度で尖らせ、2~3mmの平らな面を作ります。
2. 試験手順
- 鉛筆の持ち方: 鉛筆を試験材料に対して垂直に保持し、一定の圧力(一般的には7.5N)を加えながら45度の角度で試験材料の表面を引っかきます。
- 鉛筆硬度の測定: 最も硬い鉛筆から順に試験を行い、引っかき傷が発生しない最も硬い鉛筆の硬度を測定します。この鉛筆の硬度が、その樹脂プラスチック材料の鉛筆硬度となります。
3. 評価
- 引っかき傷の観察: 各鉛筆で試験後に引っかき傷ができたかどうかを観察します。引っかき傷が確認できた場合、その硬度の鉛筆は不合格となります。
- 結果の記録: 最も硬い鉛筆から開始し、引っかき傷ができなくなるまで硬度を下げていきます。傷ができなかった最も硬い鉛筆の硬度が、材料の表面硬度として評価されます。
4. 結果の解釈
- 硬度等級が高いほど、材料が硬く、表面の耐傷性が高いことを示します。逆に、柔らかい鉛筆で傷がつく場合、材料が柔らかく、表面の耐傷性が低いことを示します。
5. 試験の留意点
- 環境条件: 試験は一定の温度と湿度の条件下で行うことが望ましいです。環境条件が異なると、鉛筆硬度の結果に影響を与える可能性があります。
- 鉛筆の角度と圧力: 鉛筆を試験材料に当てる角度や圧力が一定でなければ、結果が不正確になる可能性があります。特に圧力は規定値を守る必要があります。
鉛筆硬度試験機械の一覧
機械名 | メーカー | 特徴 | 使用方法 |
---|---|---|---|
Elcometer 501 Pencil Hardness Tester | Elcometer | 高精度な鉛筆硬度試験機で、ISOおよびASTM基準に準拠。 | 鉛筆を一定の圧力で保持し、試験片に対して一定の速度で移動。 |
BYK Gardner 5850 Automatic Pencil Hardness Tester | BYK Gardner | 自動化された鉛筆硬度試験機で、精度と再現性が高い。 | 自動で鉛筆を45度に保持し、一定の荷重を加えて試験を実施。 |
Taber Shear/Scratch Tester Model 551 | Taber Industries | 鉛筆硬度だけでなく、複数の硬度試験に対応可能。 | 鉛筆の硬度テストに加え、様々な荷重条件下での傷付け試験が可能。 |
Wolff-Wilborn Pencil Hardness Tester | Wolff-Wilborn | 伝統的な鉛筆硬度試験機で、使いやすく安定した結果を提供。 | 鉛筆を所定の位置にセットし、手動で引っかき傷を評価。 |
TQC Pencil Hardness Tester SP0010 | TQC Sheen | コンパクトで持ち運びが容易な鉛筆硬度試験機。 | 鉛筆を試験片に対して一定の圧力で押し付け、手動で試験。 |
代表的な鉛筆硬度試験機械の特徴
Elcometer 501 Pencil Hardness Tester
- メーカー: Elcometer
- 特徴: 高精度でISO 15184およびASTM D3363に準拠した鉛筆硬度試験機です。金属製の筐体で安定性が高く、精密な硬度測定が可能です。
- 使用方法: 鉛筆を一定の圧力(一般的に7.5N)で保持し、45度の角度で試験片に対して移動させます。試験後、傷の有無を観察して硬度を評価します。
BYK Gardner 5850 Automatic Pencil Hardness Teste
- メーカー: BYK Gardner
- 特徴: 自動化された鉛筆硬度試験機で、一貫した圧力と角度で試験を行うことができるため、精度と再現性が非常に高いです。試験の自動化により、試験者の誤差を最小限に抑えることができます。
- 使用方法: 鉛筆を試験片に対して自動的に45度で保持し、設定された荷重を加えて試験を行います。自動モードにより、複数の硬度を連続して評価することが可能です。
Taber Shear/Scratch Tester Model 551
- メーカー: Taber Industries
- 特徴: 鉛筆硬度試験だけでなく、その他の硬度試験やスクラッチテストにも対応可能な多機能試験機です。耐久性に優れ、広範囲の試験に対応できます。
- 使用方法: 鉛筆硬度のテストだけでなく、複数の荷重条件下での傷付け試験も行うことができ、幅広い用途に対応します。
Wolff-Wilborn Pencil Hardness Tester
- メーカー: Wolff-Wilborn
- 特徴: 伝統的な鉛筆硬度試験機で、シンプルなデザインと操作が特徴です。手動で行う試験のため、試験者の熟練度が結果に影響を与える可能性がありますが、使いやすさと安定した結果を提供します。
- 使用方法: 鉛筆を所定の位置にセットし、手動で引っかき傷を評価します。比較的コストが低く、小規模な試験に適しています。
TQC Pencil Hardness Tester SP0010
- メーカー: TQC Sheen
- 特徴: コンパクトで持ち運びが容易な鉛筆硬度試験機です。現場での簡易試験に適しており、手軽に使用できるため、多くのユーザーに利用されています。
- 使用方法: 鉛筆を試験片に対して一定の圧力で押し付け、手動で試験を行います。試験後、傷の有無を確認し、材料の硬度を評価します。
鉛筆硬度試験機械の選定ポイント
- 精度と再現性: 高精度の機械を使用することで、再現性の高い結果を得ることができます。自動化された機械は特に精度と再現性が高く、試験者の誤差を最小限に抑えることができます。
- 使用環境: 試験を行う環境や用途に応じて、機械のサイズや携帯性も考慮する必要があります。コンパクトなモデルは持ち運びが簡単で、現場での使用に適しています。
- 試験規格への準拠: ISOやASTMなどの国際規格に準拠した機械を選ぶことで、信頼性の高い試験結果を得ることができます。
- 多機能性: 複数の硬度試験やスクラッチテストに対応する多機能試験機を選ぶと、幅広い試験に対応可能で、コストパフォーマンスが向上します。