1. 樹脂プラスチックの表面張力とは
表面張力とは、物質の表面が縮もうとする力で、液体や固体の表面状態を示す物理的性質の一つです。樹脂プラスチックの場合、コーティングや接着、印刷などの加工時に材料の表面張力が重要な役割を果たします。表面張力が高いと、液体(インク、接着剤など)が表面に広がりやすく、低いと広がりにくくなります。
2. 樹脂プラスチックにおける表面張力の重要性
- 接着性や塗装性の向上:表面張力の低いプラスチックには、接着剤や塗料がなじみにくいため、表面処理が必要です(例:プラズマ処理やフレーム処理)。
- 撥水・撥油効果:フッ素樹脂などは表面張力が極めて低いため、水や油を弾く性質があります。
- 静電気防止:表面張力が影響する材料の帯電特性も、産業用途で重要です。
3. 樹脂プラスチックの表面張力一覧表
材料名 | 表面張力 (mN/m) | 特性・用途 |
---|---|---|
PTFE (テフロン) | 18 | 極めて低い表面張力、撥水・撥油効果 |
PE (ポリエチレン) | 31 | 接着や印刷が難しく、表面処理が必要 |
PP (ポリプロピレン) | 30 | 耐薬品性が高く、表面処理なしでは塗装困難 |
PS (ポリスチレン) | 33 | 一般的なプラスチック、透明性が高い |
PC (ポリカーボネート) | 34 | 高強度で透明、接着性が比較的良い |
PMMA (アクリル樹脂) | 42 | 高い透明度、塗装・接着が比較的容易 |
PET (ポリエチレンテレフタレート) | 43 | 飲料ボトルなどに使用、リサイクル可能 |
ABS樹脂 | 35 | 耐衝撃性が高く、接着性も良好 |
POM (ポリアセタール) | 42 | 摩擦係数が低く、機械部品に使用される |
PVC (ポリ塩化ビニル) | 39 | 耐久性があり、表面に塗装が可能 |
ETFE | 23 | 耐薬品性が高く、撥水性に優れる |
PVDF | 25 | 化学的安定性が高く、フィルムやチューブに使用 |
4. 表面張力の測定方法
- 接触角法:液滴を表面に垂らし、液滴の接触角から表面張力を計算します。
- 滴下法:標準液体を樹脂表面に垂らし、液滴の広がり具合を観察する方法です。
- ダイインク法:インクの広がりから表面張力を推定する簡便な方法。主に印刷業界で使用されます。
5. 表面処理による表面張力の向上
- プラズマ処理:プラスチック表面を活性化させ、接着性を高めます。
- フレーム処理:表面を酸化させて表面張力を向上させ、塗料や接着剤をなじませやすくします。
- コロナ放電処理:フィルムや包装材などに対して、接着性や印刷性を向上させます。
6. まとめ
樹脂プラスチックの表面張力は、接着やコーティングなどの加工において重要な要素です。プラスチックごとに異なる表面張力を理解し、必要に応じた表面処理を施すことで、製品の品質を高めることができます。