用語集

引張試験の種類・方法・試験片厚み

樹脂プラスチックの引張試験は、材料の機械的特性、特に引張強度、伸び、弾性率などを評価するための基本的な試験です。引張試験は、特に成形品やフィルム、シートなどの製品開発や品質管理で広く使用されます。以下に、引張試験の概要、種類、方法、試験片の厚みなどを詳しく説明します。

1. 引張試験の概要

引張試験は、材料に対して引張力を加え、その材料がどれだけ伸び、どのような強度で破断するかを測定する試験です。材料の応力-ひずみ曲線を得ることで、以下のような機械的特性を評価します。

  • 引張強度 (Tensile Strength): 材料が破断する直前の最大応力
  • 破断伸び (Elongation at Break): 材料が破断するまでにどれだけ伸びたか
  • 弾性率 (Modulus of Elasticity): 材料の弾性変形範囲での剛性
  • 降伏点 (Yield Point): 材料が塑性変形を始める応力点

2. 引張試験の種類

a. 定速度引張試験 (Constant Rate of Extension, CRE)

  • 概要: 一定速度で試験片を引張り、その際の応力とひずみの関係を記録する方法。最も一般的な引張試験法です。
  • 用途: 一般的なプラスチック材料やフィルムの引張強度評価に使用。

b. 定負荷引張試験 (Constant Load, CL)

  • 概要: 一定の荷重をかけ続け、その時の試験片の伸びを記録する方法。クリープ試験などに使用されます。
  • 用途: 時間依存性のある材料の評価、クリープ特性の測定。

c. 高速引張試験

  • 概要: 高速で引張ることで、材料の高速変形特性を評価する試験法。
  • 用途: 自動車のエアバッグや安全部品のように、衝撃を受ける環境での材料特性を評価。

3. 引張試験の試験方法

a. 試験機

  • ユニバーサル試験機 (Universal Testing Machine, UTM): 試験片を両端でクランプし、引張力を加えて試験する装置。負荷セルとエクステンソメータを装備し、応力とひずみを計測します。
  • 試験速度: 標準試験速度は、1~500 mm/min まで様々ですが、通常は5 mm/min または50 mm/min が使用されます。

b. 試験片の種類と規格

  • ダンベル型試験片: 最も一般的で、ISO 527 や ASTM D638 などで規定されています。幅広い材料の引張試験に対応しています。
  • タイプ: ASTM D638では、タイプ I~Vまでの形状が規定されており、特にタイプ I が標準的に使用されます。
  • フィルム・シート試験片: 薄膜やシート状材料用に、JIS K 7127 などで規定された特定の形状の試験片が使用されます。
  • 厚み: フィルムの場合、標準的な厚みは0.25 mm以下で試験されることが多いです。

c. 引張試験の流れ

  1. 試験片の準備: 規定された形状と寸法に切り出し、表面の欠陥や汚れを取り除きます。
  2. クランプ: 試験片を試験機のクランプに正しく固定します。
  3. 引張試験: 規定された速度で引張り、応力とひずみを記録します。
  4. 結果の解析: 応力-ひずみ曲線から引張強度、弾性率、破断伸びなどの機械的特性を評価します。

4. 厚みの考慮

  • 試験片の厚み:
  • 標準試験片: 通常は2~4 mmの厚みが使用されますが、材料や試験規格によって異なります。
  • 薄膜材料: 厚みが0.25 mm以下のフィルムやシートの場合は、専用の試験片と試験条件を使用します。
  • 厚みによる影響:
  • 厚みが大きくなると、内部欠陥や不均一性が顕著になりやすく、試験結果に影響を与える可能性があります。
  • 一方、薄い試験片では、伸び率が大きくなる傾向がありますが、破断強度が低下する場合があります。

5. 試験条件の調整

  • 温度: 試験環境の温度が材料の引張特性に与える影響を考慮する必要があります。特に、高温や低温での引張試験は、耐熱性や低温脆性を評価するために重要です。
  • 湿度: 樹脂材料の吸湿性が高い場合、湿度を制御した条件で試験を行うことが推奨されます。

6. 試験結果の評価

  • 応力-ひずみ曲線: 試験後、得られた曲線から機械的特性を読み取ります。特に、降伏点、引張強度、破断伸び、弾性率の評価が重要です。
  • 不均一性の評価: 破断面の観察や、曲線の形状から、材料の不均一性や欠陥の有無を評価します。

まとめ

樹脂プラスチックの引張試験は、材料の機械的特性を評価するための重要な試験です。試験片の形状や厚み、試験速度や環境条件を適切に選定し、精密な評価を行うことで、材料の品質管理や設計において信頼性の高いデータを得ることができます。

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